きものコラム
2015-10-16「楓」?「紅葉」??
神無月も中旬、山々もだんだんと色づき始めてきました。
もうすぐ「もみじ狩り」なんてニュースも聞かれる様になりますよね。
紅葉(こうよう)というと真っ先に思い浮かぶのが「紅葉(もみじ)」ではないでしょうか。そこで皆さんは、これって楓?それとも紅葉?なんて迷ったことはありませんか?
そもそも「もみじ」は「かえで」と植物分類上では同じで
楓が紅葉して「もみじ」になるわけですが、
かえでの中の特に紅葉して黄色の目立つものを「もみじ」と呼んでいます。
そこで1つ疑問が!?
紅葉(こうよう)と紅葉(もみじ)は同じ漢字ということ。
調べてみたら、
「こうよう」とは秋の野山の木々が紅や黄色に変化した状態の事で、
「もみじ」とは「こうよう」した楓の中で最も紅色が目立つものだとありました。
なるほど〜〜って感じですよね。
ところで着物や帯にも、こうようの柄など多くあります。
写真の帯は、私のお気に入りの塩瀬の染帯でまだ着物を習いたての頃、「夏以外締められますよ」という店員さんの一言で、購入したものです。
もちろん、楓の移り変わりだけが描かれている訳ではないので、
その通りですが私は青楓を意識して4月後半から5月までと、10月~12月前半くらいに締めることが多いです。
帯揚や帯締とのバランスで季節感を表現する様にしています。
特にこの帯は、下の写真のように前帯の柄が裏表違うので、春と秋を使い分けています。
ただその場合は結び始めが逆手になったりするので、テクニックが少々必要になりますが、季節感を表現するのにはとても便利な帯なので、毎回のコーディネートを楽しんでいます。
それが着物の、醍醐味、でもありますよね。
2015-10-06「神無月の色」・・三つの旬の移り変わり
10月になりましたね。
ここ数年、秋が短いと感じている方も多いのではないでしょうか。
かさねの店内も秋仕様に。
とはいえ、汗ばむ日もありますから、
どんな装いにしようか本当に迷ってしまいます。
殊に着物は、秋単衣を10月初旬まで着用している人も多く、本来は袷ですので、「帯はどうしたらいいのか?半襟は?」と、ネットで検索しても色々で、考えれば考えるほどわからなくなってしまいますよね。
そこで今回は、帯び周りのコーディネート例を、
日本の伝統の配色を参考に、同じお着物と帯でご紹介します✨。
まずはさっそく写真でご紹介。
「初旬」
萩・・・『紫、白』秋の山野にたおやかな紫色の花を咲かせる萩。
「中旬」
櫨(はじ)・・・『朽葉、黄』秋になり美しく紅葉した山櫨(やまはぜ)の葉を
連想させる色。
「下旬」
紅葉・・・『赤、濃赤色(写真は蘇芳)』紅葉した木の中で
最も美しい楓を表現した色。
日本の配色美は、身分により着用の色が決められていた(冠位十二階)奈良時代の後、平安時代の貴族の「かさね色目」が始まりとされています。
当時貴族たちは、十二単に代表されるように色を重ね、その配色に呼び名をつけて季節や情景を表して教養を競い合っていたと言われています。
悠久の歴史を感じながらコーディネイトを考えるのも楽しいです。
さて、この時期は、写真のように色づき始めた野山の葉の色にちなみ、ゴールド系の入った温かみのある色や、枯葉色、黄土色、抹茶色などの、しっとりとした落ち着きのある色合いを基調にして、秋らしい印象を大切にした装いがお勧めです。
例えば、桔梗(ききょう)、女郎花(おみなえし)、萩、尾花(おばな)、ワレモコウ、野菊、葛、などの花々、蜻蛉、深まる秋の紅葉など、お持ちになっている帯揚げや帯締め等小物で工夫してみてはいかがでしょうか。
2015-08-26女下駄のこと
8月もそろそろ終わりということで
夏の最後に、女下駄のお話です。
晩夏になっても浅草では本当にたくさんの浴衣姿を見かけます。
長襦袢を着て帯揚げや帯留めをして着物風に、華やかなヘアースタイルと帯結び、下駄でなくゴム草履を履き、一見「あれっ!」と思う事もしばしばですが、個性の表現は、年々華やかになり自由に変化をしています。
先月の隅田川花火大会では、男女共に浴衣の方が多く、韓国や中国の方もかさねで浴衣に変身してとても喜んでいました。
着物文化が、更に広がっていくきっかけになればという願いを込めて、今回は下駄についてのお話です。
下駄は、 古墳時代池守遺跡(埼玉県行田市)から歯下駄が出土していることからもわかるとおり、その歴史はとても古く、豪族の墓には石製模造品も副葬されていたようです。
明治時代までは、桐下駄は裕福な人の履きものでしたが、昭和30年頃まで最も一般的なはきものとして用いられてきました。
●連歯“れんし”下駄
日常的な下駄で駒下駄と呼ばれることが多い。
●ぽっくり下駄(関西はコッポリ)
お祝い時に履きます。
●端棒“はなぼう”下駄
庭下駄で東南アジアやアフリカにもあります。
●中刳り“なかぐり”下駄
江戸末期、女性の外出用。
●天反り“てんそり”下駄
昭和の初めに靴の影響を受けて作られた台が曲線的になるもの。
これは、シュースと呼ばれていました。
現在の代表的な底
(上から)駒下駄 のめり 右近
現在は、右近の方が多いようですが、駒下駄の中にも白木・黒捌き・焼き上げ・黒や赤の塗り・表付きや鎌倉彫りと種類は沢山あります。褄先からおろし小股で歩くようにしてみてくださいね。
階段などは、からだを少し斜めにして上前をちょっとつまみ上げるようにして下りると滑りにくく、所作も美しく見えますよ。
浴衣の機会も残り少なくなってきましたが、着る時にはちょっと意識をして女子力をアップさせてみましょう。
是非来年のご参考に♪
2015-08-11とうろう流し
8月15日(土)は、隅田川でとうろう流しがあります。
そこで今回はとうろう流しにちなんで、お盆のお話。
とうろう流しは、送り盆に先祖の魂を弔うためにとうろうなどにお供え物と一緒に川に流す行事で、全国的には「送り火」の一種だと考えられています。
長崎県などでは、精霊(しょうりょう)流しと呼ばれ、
精霊舟と呼ばれる舟に故人の霊を載せて運ぶというもの。
この長崎の精霊流しは中国の影響を受け、爆竹の音や祭りさながらの雰囲気のようで、送り火の中で、静かに先祖を見送るというのとはかなり違いがあるようです。
ちなみにとうろうを流すのではないのですが、
私の生まれ故郷の高崎では、迎え盆の時盆棚を家につくり、
玄関先にきゅうりとなすに割り箸を刺して
きゅうりの馬(先祖が足の早い馬に乗ってくる)、
なすの牛(景色を観ながらゆっくりと帰るという意味)を作り置いておきます。
ですので各家できゅうりの馬となすの牛をみかけると、お盆だなあと実感していました。
地域によって様々な風習が伝わっていて興味深いですよね。
また、この時期の行事としては、盆踊りがあります。
これは、500年の歴史のある民族芸能ですが
現在では娯楽的な要素が強くなっていて、屋台の綿菓子や焼きそばを食べたくて
子供の頃は親と一緒にでかけた思い出も多々…。
最近は先述のとうろう流しも環境問題に配慮して取りやめたり、今年は露店が禁止になったりと風習も変わってきていて、少し残念。。
きものの世界でも、職人さんがどんどん減り日本の文化の継承も難しくなってきています。
この時期の日本文化といえば、やはり浴衣ですよね。
花火大会だけでなく、盆踊り、とうろう流しの機会にも浴衣をきてみませんか?
そして先祖を思い出しながら、
感謝し、自分自身がより良い人生を送れるよう、ご自身の「良いところ」を再確認してみてはいかがでしょうか?
なかなか自分の良いところは、自分では気づけないものですが、浴衣を着ておでかけする。そんなすこしの出来事で、きっといつもと違う自分を発見できると思います。なんといっても現在生きている私たちが幸せでいることが、故人が喜ぶ事だと思っておりますので、そんなお手伝いをかさねではさせて頂きたいなあと改めて感じるのでした。
2015-07-08浴衣の歴史 江戸庶民の夏衣•浴衣
7月に入りいよいよ盛夏ということで、きものは薄物や浴衣、帯も紗や絽、麻などの透けるものに衣替えし、小物の色合わせなど、わくわくする季節がやって来ましたね。
特に近年は浴衣をきもの風に着る人も増えてきて、ヘアアレンジもかなり華やかになってきていますし、先月からはここ浅草でも日本の観光客の方だけでなく、外国人の方の浴衣姿をよく見かけるようになりました。
そこで、今回はこの「浴衣」のはじまりについてのお話。
そもそも浴衣は、平安時代の貴族が、蒸し風呂に入る時に着用していた「湯帷子
(ゆかたびら)」が、始まりとされていることは、ご存じの方も多いかも知れません。
「鳥居清長 女風呂」
では、この湯帷子がなぜ「ゆかた」と呼ばれるようになったかというと、江戸時代も後期になると、綿の生産量も増え湯屋(銭湯)の普及も高まり、元々湯上がりの水気をとるものだったのが、庶民の夏の衣類のひとつになり略されて「ゆかた」と呼ばれるようになったとのこと。
因みに当時の湯屋は、混浴で、寛政の改革で一旦禁止をされたもののその後復活、身分を越えての社交場であったようです。 浮世絵にも当時の様子やゆかたが描かれているものもありますが、この「湯屋」の他にも「湯女(ゆな)風呂」といういわゆる風俗営業の店もあり、 身体を洗う湯女という女性が、後に男性の三助にかわっていったようですね。
「鳥居清長 吾妻橋下の涼み船」
さてこの浴衣ですが、最近は生地も木綿や麻、絹紅梅、綿絽 長板中型、注染染、絞り染めと、手間隙かけたワンランク上の物を選ぶ人も増えてきました。
問屋さんによると、今年の柄の傾向は大柄で、カラフルな物や猫柄が人気だそうです!
もうすぐ花火大会などイベントもめじろ押し、
小物や帯結びなど自分らしく楽しんでほしいものです。
ただ、ご注意ください!
胸元のはだけなどの着崩れ。
せっかくの浴衣ファッションも残念な結果にならないように、補正をしたり、涼しさと美しさ輝く「大人のゆかたコーデ」で、お出かけしましょう。
そうそう、せっかく着るのですから、歩き方は特に美しくありたいものですね♪
2015-06-06水無月
和服の世界でも衣替えの季節を迎えました。
きものは、袷から単衣、帯も夏用に変わりますが、
その素材は実に豊富でコーディネートに迷う方が多いのもこの時期
ちなみに、6月と9月は単衣、7月8月の盛夏は薄物ですが、
この4ヶ月を総称して「夏衣」といわれています。
ひと口に単衣といっても、夏に向かう6月と秋に向かう9月では、
コーディネートは違ってきます。
6月の単衣は、梅雨時期とも重なり、ジメジメと暑い日も多く
涼感を表現したり逆に梅雨寒の日もあったりして、
そのコーディネートには大変気を使ってしまいます。
そこで、同じ着物や帯でもその変化をつけるテクニックとして
素材の他、色合わせというものがあります。
月初めには暖かみのある色、
しょう。
きものは単衣や紗合せ、絽ちりめん。
なお、長襦袢はきものよりも更に先取りしてますし、
ります。
ただ最近では5月くらいから単衣だったり、
きものの販売をしている方などは一年中単衣という方も多くいらっ
ですので、あまり形式にとらわれず、素材、文様、色合わせなどで
自分の着こなしを大いに楽しんでみては如何でしょうか?